F1名レース解説 2019年F1ハンガリーGP

過去の名レースを振り返る「F1名レース解説」。今回は、2019年F1ハンガリーGPです。絶対王者メルセデスを予選で直接負かして、0.018秒という僅差ながらも、今季初めてのポールポジションを獲得したレッドブル・ホンダ。とりわけホンダF1としては13年ぶりのポールポジションという快挙となりました。追い抜きの極めて難しいこのハンガロリンクで、先頭からスタートしたレッドブル・ホンダと手強いマックス・フェルスタッペンを、3番グリッドからスタートしたルイス・ハミルトンはどのように攻略したのか、F1史上稀に見るガチンコバトルのその全貌を振り返りたいと思います。

まず、追い抜きの難しい近年のF1の中でも、ハンガロリンクは特に追い抜きの難しいサーキットですから、モナコ同様予選の結果はほとんど絶対的と言ってもいいほど大きな意味を持ちます。そしてそのハンガロリンクレッドブル・ホンダはポールポジションを獲得したのですから、これは勝利への大きな一歩です。ボッタスとフェルスタッペンの予選アタックの比較動画があるのですが、ほとんど差はありません。最後の0.01秒ほどをなんとかひねり出してもぎ取った、会心ポールポジションでした。そして当然、この日のメルセデスはトラブルでアタックが出来ないということもなかったので、いつも通りの強いメルセデスを直接予選で負かしたわけです。これはただのポールポジション以上の価値がありました。

さて、いつにもまして超重要なレーススタートですが、フェルスタッペンとハミルトンの蹴り出しがよく、フェルスタッペンはすぐに1コーナーのイン側になる右手のラインを守りにいきました。そのため、相対的に加速の遅かったもののわずかな間だけフェルスタッペンのトウを使えたボッタスはフェルスタッペンの真左へ、そしてそのさらにアウト側にはスタートのよかったハミルトンが並んで、スリーワイドの状態で1コーナーへ侵入しました。この時ブレーキングでロックしてボッタスが若干突っ込み気味になってしまい、ボッタスがターンインしなければ曲がることができないハミルトンを尻目に、フェルスタッペンはリードを築きました。さらに、ターン2でメルセデスの2台は再びサイドバイサイドのバトルになり、その直後のターン3でハミルトンが前に出たのですが、この時ボッタスの加速が鈍り、後ろから来たルクレール接触します。これでフロントウィングを損傷したボッタスは序盤に最後尾まで後退し、優勝争いから脱落します。また、このメルセデス同士のバトルの間に、フェルスタッペンはさらにリードを築き、先頭でギャップをコントロールできる立場となりました。フェルスタッペンのチームメイトのガスリーは、ご存じの通りこの時スランプに陥っており、スタートで失敗したため、こちらも優勝争いから脱落しています。

最初にレースが動き始めた瞬間は、実はピットストップ前から始まっていました。中継でも放送されましたが、フェルスタッペンはタイヤ交換をする何周も前から、グリップ低下を訴えていました。何故ピットインしないのか不思議に思った人もいたことでしょうが、これには理由がありました。この日、フェラーリのペースが非常に悪かったため、優勝したハミルトンから3位のベッテルは70周で61秒もの大差をつけられてフィニッシュしています。これは1周あたり約0.9秒ほどの差で、フェルスタッペンの訴え通りに19周ほどで早めにピットインしてしまうと、25周目あたりから遅いフェラーリに引っ掛かって、コース上での時間をロスすることになり、フェラーリの後ろで立ち往生している間に、ハミルトンに易々とオーバーカットされたことでしょう。チームはフェラーリに対してピットストップ1回分のタイム差を作ってからピットインすることで、遅いフェラーリの後ろに下がるという最悪の事態だけは避けたかったのです。実際、25周目にピットインしてピット出口からコースに復帰した際、フェラーリはフェルスタッペンのすぐ後ろまで来ていましたから、25周目という周回でのピットインは、最適なタイミングであったことが分かります。1周でも少ない周回数であればフェラーリの後ろに下がり時間をロスし、ステイアウトしたハミルトンにオーバーカットされてゲームオーバー、1周、もしくは2周でも多ければ、ハミルトンもフェラーリに対してフリーストップが出来るようになり、アンダーカットを試みられてしまいます。メルセデス曰くハードタイヤのウォームアップが良くなかったこと、また先述の通りフェラーリが邪魔になることが分かっていたためアンダーカットを選択しませんでした。ですのでアンダーカットが成功したかどうかは誰にも分かりませんが、セカンドスティントでのハミルトンのアタックを見る限りでは、成功していた可能性は極めて高かったと思うので、フェルスタッペンがこの周回でピットインしたことは大正解でした。

一方のハミルトンは、クリアエアを得たことでペースアップし、オーバーカットやSCを狙いながら順位の逆転を狙いますが、新しいハードタイヤを履いたフェルスタッペンは、ファステストラップを更新しながらハミルトンとのギャップをうまく保ったため、オーバーカットは成功しませんでした。しかし逆転が出来ないと分かるや否や、メルセデスは即座にハミルトンにピットインを指示。32周目にハードタイヤに交換し、コース上で直接追い抜きを試みます。ピットアウト直後5.8秒あったタイム差を、34周目の終わりまでに全てなくして真後ろにぴったりと張り付きます。この時点では彼らは2ストップの可能性について除外していましたから、もしここで抜けなかったらそのままの順位でレースは終わってしまうと考えていたはずなので、俄然プッシュしていましたね。そして39周目、熱いバトルが展開されます。ハミルトンは1コーナーで並ぶと、スイッチラインを取って右に左にプレッシャーをかけまくりますが、フェルスタッペンは一切動じずうまく抑え込まれてしまいました。ターン4で飛び出したハミルトンは、一旦バックオフし、プッシュすることで温度の上がったブレーキを労る走りに切り替えます。かなりペースが落ちたので、フェルスタッペンがチームに 、ハミルトンにトラブルでもあったのかと質問するほどでした。

そしてこの追い抜きの失敗のあと、ハミルトンがバラバラになったブレーキ温度をマネジメントしている間に、メルセデスの戦略担当により実に10周の間に渡って、このレース最大のキーポイントについて話し合われていました。今週のレースは、金曜日が雨だったこともあってタイヤのデータが不足しており、決勝レース中は各チームは常にタイヤの状態を見ながら走行していたのですが、メルセデスのストラテジストは、ハミルトンに新たにミディアムタイヤを与えてペースアップすることで、フェルスタッペンに自陣営の速いペースに対応させることにより、フェルスタッペン側が思い描いている適切なタイヤのデグラデーションのスケジュールから逸脱することを突き止めたのです。また、この時フェラーリは40秒以上後方にいたために、順位を失うことなく新しいタイヤを手にすることが出来る状況になっていたことも、2ストップ戦略の採用を後押ししました。したがって、ハミルトンに2ストップ戦略を与えてレース終盤での逆転を狙うことになったのですが、この戦略もまた、1回目のそれ同様ピットストップ前から始まっていました。メルセデスはフェルスタッペンに同じ戦略を取らせないために、まずハミルトンにギャップを縮めろとだけ指示し、その後ピットインを命じることで、フェルスタッペン側の対応を遅らせます。そしてアウトラップでハミルトンが非常に速く走ったことで、もともと詰めておいたギャップはピットストップ1回分より少なくなってしまいました。フェルスタッペンはこの状態でピットインしたところで、ハミルトンにアンダーカットされる形で逆転を許すため、勝つための唯一の方法は、最後まで今履いているハードタイヤで走ることだけになりました。しかしながらハミルトンがピットインした時点で既に25周走り込んでいましたから、フェルスタッペンも必死になってプッシュしていましたが、最初19秒5くらいだったのが20秒5あたりまであっという間にタイムが落ち込んで、最終的には21秒台までずるずるとラップタイムは落ちていきました。一方のハミルトンは、ミディアムタイヤのウォームアップが終わるや否や、18秒5から18秒7あたりを連発しながらどんどん差を詰めていきました。そして66周目で真後ろまで追い付くと、67周目のターン1であっさりとハミルトンはフェルスタッペンを仕留めたのでした。39周目に同じ場所でバトルになった際は、フェルスタッペンはスイッチラインをうまくとってしぶとく抵抗していましたが、この時は一切抵抗しませんでした。完全にタイヤは死んでいて、ハミルトンとのタイヤライフの差は明らかでした。ただ、一方のハミルトンも、決して楽なレースをしていたわけではありません。49周目にミディアムでコースに復帰したあと、フェルスタッペンのとのタイム差は20秒ほどありました。レースは残り21周ですから、追い付くだけでも1周あたり1秒の計算です。追い抜きを仕掛けることを考えるとさらに早い段階で後ろについておかなければなりません。しかも当初、計算上は最終ラップに追い付き、かつタイヤライフはほぼゼロになるとチームはハミルトンに伝えていました。このような状況においては、追いかけられる側より追いかける側の方が、はるかに精神的にきついのは明白ですよね。現にハミルトンはスティントの序盤は「この(ピットへの)呼び出しは間違ってたよジェームズ」「19秒も前の相手なんかキャッチアップできないよ!」などと疑問を呈する無線を語りかけていましたが、最後にはきっちりやり遂げてしまいました。このあたりはさすが5度のワールドチャンピオンと言ったところでしょうか。レース終了後の無線でジェームズに戦略を疑ったことを謝罪していたのも、さわやかでよかったですね。フェルスタッペンも素直に負けを認めていたので、こういうところまで含めてなんの後味の悪さもない、素晴らしいレースとなりました。

いかがだったでしょうか。このレースは、レッドブル・ホンダのポールポジション獲得を引き金として、メルセデスからありとあらゆる戦略の引き出しを開けさせた、至高のガチンコバトルであることが分かったと思います。ポールポジションを取られたらスタートで、それもだめならアンダーカット、それでもだめならオーバーカット、それでもだめならコース上で追い抜きを、それでもまだだめなら2ストップ、というように、メルセデスからどんどん新しい戦略を引き出させて、追い詰めていっていますよね。特に最後の切り札となった2ストップ戦略は、チームですら成功するかどうかは分からなかったわけですから、この日のレッドブル・ホンダがいかにメルセデスの脅威となったかという点でも、ポールポジション獲得同様非常に有意義な1日となりました。

そしてこれは補足なのですが、最初から2ストップ戦略にしておけばよかったのではないか、フェラーリが遅すぎたことがメルセデスに有利に働いたのではないか、という意見がちらほら見られますが、これは後付けの理屈に過ぎないと思います。ハンガロリンクでピットストップを増やすことは、コース上での順位を失うことに直結します。今回レッドブル・ホンダの持ち込んだマシンはとにかく前で抑え込むようにセットアップしてありましたし、2ストップを採用したメルセデスですらレース前の会議ではその可能性を除外していました。先頭からスタートして、1ストップ戦略で逃げ切るという作戦は、ハンガロリンクでは非常に合理的かつ競争力のある戦略であり、その戦略を成功させる重要な1ステップであるポールポジションを獲得しているのですから、この日のレッドブル・ホンダは、やるべきことをきちんとやりきっていたと思います。レッドブル側に戦略上の落ち度があったのではなくて、メルセデスが1枚上手だったと称えるべきだと思います。次にフェラーリの話ですが、これも結果論的だと思います。確かに、フェラーリが遅すぎたことは、2ストップ目がフリーストップだったことはメルセデスにとって有利、つまりレッドブルにとって不利に働きましたが、1ストップ目はどうだったでしょうか。フェラーリが邪魔をして、メルセデスはアンダーカットを狙いに行けませんでした。これはレッドブルに有利に、つまりメルセデスに不利に働いたことを意味しており、2ストップ目と逆の事が起きています。同じ「フェラーリが遅い」という事実が、ある瞬間と別の瞬間では全く別の結果を与える。こういうところもレースの面白いところなのだと思います。

レッドブル・ホンダが勝てなかったことは確かに残念ですが、出来ることは全てやりきった上でそれでも負けたので、メルセデスの方が速いだけでなく、1枚上手だったということなのです。

マックス・フェルスタッペンが、ワールドチャンピオンになれない理由

フェルスタッペンの父ヨスが、ハミルトンと同じマシンにマックスを乗せることを世界中が望んでいるという記事を拝見したので、個人的見解を述べさせてもらいます。

結論から言いますが、たとえW11にマックスを乗せて直接争わせたとしても、彼がハミルトンに勝てなかった可能性が極めて高かったと考えられます。それは、レッドブルのハイレーキマシンからメルセデスのローレーキマシンに乗り換えることで、異なる挙動のマシンへの対応に時間がかかるという意味ではなく、ドライバー個人のドライビングの総合的なスキルが、ハミルトンに遠く及ばないという意味です。

まず第一に、フェルスタッペンはシーズンを通して、ドライビングに一定の波があります。近年のレースで例を挙げるなら、2018年メキシコGPや2019年オーストリアGP、そして同年のドイツ、ハンガリー、ブラジルのように、あるレースでは支配的、ないしそれに準ずるレースペースで走れても、2018年中国GP、同年のモナコなど、別のあるレースでは、自らのミスで取れるべきポイント、または優勝すらも取りこぼしています。一方のハミルトンは、自らのミスでポイントを取り損ねたレースは、選手権の行方が確定した後のものであれば、2019年ブラジルGP、そうでないものでは、2020年ロシアGPなどですが、さらにもう1つ直近のミスを列挙するためには、なんと2016年スペインGP、実に4年以上もの時間を遡ることになります。1ポイント差でチャンピオンが決まることもある選手権では、これほど走りの一貫性に差があっては、対決させる前から敗北は確定しているようなものです。
第二に、これは同じ世代の期待の若手ルクレールにも言えることなのですが、フェルスタッペンは他者との接触や、際どいバトルが非常に多いドライバーです。デビューイヤーと比べると改善され続けてきてはいるのですが、それでも多すぎますし、第一の理由と関わってくるのですが、それでポイントを取りこぼす場面が見られます。

これらの要点の、具体的な例を2つ挙げてみましょう。1つ目は、2018年ブラジルGP。記憶に新しい、周回遅れのオコンとの接触で優勝を失ったあのレースです。多くの視聴者はフェルスタッペンが一方的に被害者だと考えているでしょうが、実際にはそうではありません。リプレイをよく見てもらえればすぐに分かるのですが、フェルスタッペンはオコンにスペースをほとんど残していません。オコンはフェルスタッペンと並んでターン2に侵入した際、イン側の縁石の内側に設けられたソーセージ状の縁石ギリギリまで寄せていますが、互いのタイヤのサイドウォール同士ではなく、互いのタイヤの接地面同士が接触しています。ルールでは、バトルの際車1台分のスペースを残すことになっていますから、もしスペースを残していてそれでも接触したのなら、互いのサイドウォール同士が接触するはずで、今回は互いのタイヤの接地面同士ですから、どちらかがスペースを残していなくて接触したことになります。そしてオコンは目一杯イン側に寄せているわけですから、スペースを残さなかった犯人は当然フェルスタッペンとなります。フェルスタッペンは、自らの「だろう運転」で、優勝を失ったのです。勿論、オコンは周回遅れですから、周回を取り戻す際にはノーリスク、ノーバトルで追い抜かなければなりません。レース中に科せられる罰則のうち、失格の次に重い10秒のストップアンドゴーペナルティが科せられたことからもそれが分かります。しかし、インシデントに対する裁定を根拠に相手をいくら非難したところで、目前だった優勝は絶対に返ってきません。したがって、自分は出来るだけのことをして接触を避けながら、走行しなければならないのですが、この時のフェルスタッペンにはそれが出来ていませんでした。同年アメリカGPの、ハミルトンとフェルスタッペンの終盤のバトルを見れば、その技術、リスクを見極める力の差は明らかです。ハミルトンはフェルスタッペンとのバトルの際、もし自分が強引に抜きにいけばどんなリスクを伴うか、非常によく理解していました。接触を避けるために常に細心の注意を払っており、レース後のインタビューでフェルスタッペンにスペースを与えすぎてしまったと話していたことからもそれが分かります。もし接触すれば、タイトル争いの終盤で痛すぎるポイントの取りこぼしがあること、つまりタイトルを争っていないフェルスタッペンと、争っている自分が、それぞれ何をどれくらい失うのかということを、よく分かっていました。これがハミルトンとフェルスタッペンの差なのです。

もう1つの例が、2019年メキシコGPです。辛辣な評価になりますが、トップチーム、トップカテゴリーに在籍しているドライバーにあるまじきミスが目立ちました。まず予選での黄旗無視。これは非常に危険な行為です。もしマーシャルがコース上に出ていたらと考えると、3グリッド降格で済んでラッキーだったと考えるべきでしょう。そしてこのほんのささいなミスが決勝で大きく響いたことは、周知の事実です。スタートでは繰り上がりでフロントローを獲得した、直線の非常に速いフェラーリに前を塞がれ、ターン1、2では一緒に並んでコーナーに侵入したハミルトンと軽い接触があり、互いにマシンのコントロールを失ってシケインをショートカットしながら通過。これによりフェルスタッペンは、アルボン、ボッタス、ハミルトン、そしてマクラーレンの2台にすら前に行かれて8番手まで後退してしまいます。そしてさらに悪いことに、スタジアムセクションでボッタスを強引に抜いた際に接触によりタイヤがパンクし、最後尾まで後退し万事休す。ハードタイヤに交換した後は、6番手まで追い上げるのが精一杯でした。このレースで所謂3強チームは全車完走していますから、事実上の最後尾フィニッシュです。レッドブルはここ数年メキシコで非常に競争力のあるシャシーを持っていたこと、ホンダPUもその設計上高地シャシー同様非常に競争力があったことを考えれば、この結果がいかにチームの期待を下回っているか想像するのは容易です。まず、予選中の初歩的なミスが、スタートでの混乱と接触を招きました。黄旗無視によるグリッド降格が無ければ、ターン1までの長いストレートでフェラーリの脅威に晒された可能性は否定できないものの、もしポールポジションからスタート出来ていれば、最初のシケインをトップで通過することは、4番グリッドからスタートして同じことをするよりも遥かに簡単だったでしょう。それどころか、4番グリッドスタートはハミルトンとの接触を招き、8番手という順位を彼に与えます。そして失った順位を取り返そうとボッタスに仕掛けた際には、さらに接触し、パンクしたタイヤで1周してからピットインを余儀なくされるという最悪の事態を招いてしまいます。予選のたった1つのミスが、次々と別のミスを連鎖的に、とりわけ接触を招いているのが分かると思いますし、ボッタスとのインシデントに至っては全く不要な接触だったと思います。レースペースは最速なのはほとんど間違いないのですから、直線まで待ってパワフルなホンダPUを使って安全に抜けば良かったのです。これは後付けの理論ではありません。フェルスタッペンがボッタスを抜いたのが4周目のスタジアムセクションで、残り周回数は67周もありましたから、オープニングラップのツケを払う余裕は十分にありました。しかし「自分と相手がそれぞれ何をどれくらい失うのか」を見誤ったばかりに、そのチャンスすら失ったのです。今のF1は競争が非常に激しいので、ほんの僅かなミスにつけこまれますし、ここまで幾重にもミスが重なれば、勝ちようがありません。ハミルトンが同じ立場であれば、間違いなく直線まで待ってからオーバーテイクを仕掛けたでしょう。

これで、フェルスタッペンが将来的に良いマシンを手に入れた場合にも、タイトル獲得の望みは薄い理由が説明できたと思います。確かに彼の走りは活気があり、見ているものを熱くさせる、一番見ていて面白い走りをするドライバーです。フェルスタッペンの走りに見惚れてファンになる気持ちが凄くよく分かります。一方のハミルトンは、リスクを最小限に抑えた、悪く言えばとにかく目立たない走りをするドライバーです。フェアですが、隙が無いだけにその分派手さも無く、見ていてあまり楽しい走りをするタイプではないでしょう。しかしながら、これはあくまで見ている側の視点です。ドライバーは、熱い走りをするドライバーと呼ばれるためにF1で走っているわけではありません。シーズンが終わった後に、その年のワールドチャンピオンと呼ばれるために走っています。フェルスタッペンがタイトルを取れないのは、メルセデスが圧倒的に速いマシンを持っているからというだけではないのです。彼が正しいドライビングが出来るようにならなければ、近いようで遠いタイトルへの苦難の道のりは続くでしょう。

ニコニコ動画で有名な某F1解説動画、内容いい加減過ぎ問題

ニコニコのF1タグで恐らく最大手のあのF1解説動画、動画の内容が目に余るほどにお粗末。「解説」って言っときながら何の根拠もない自分の見解述べるだけとか、事実と異なるどころか真逆の事すら書き始めてて、もうほんといい加減にしてほしいんだわ。見なきゃ良いとかそういう問題じゃなくて、こっちがいくら意味不明な批判してる人間に理屈立てて説明してもキリないんだよね。ぶっちゃけ日本国内で不当な批判してる人間、この人の解説動画とF1Gate.comに毒されてる説マジで普通にあると思うよ。というかこの人がF1Gate.comみたいなアフィもどきの怪しいサイト斜め読みして動画作ってる可能性大。「この動画の情報は真実とは限りません」とか情報を1本の動画にまとめて発信する側の人間として失格な言い訳やめて、ちゃんとチームが出してるデブリーフをしてる動画とか、FIA.comのスチュワードの裁定が書かれてる文書読んでから作る気にはならないの?自分の感情抜きにしてインシデントそのものを論理的に評価する地頭とか持ってないの?はっきり言ってゴ○。無知な視聴者ボイロで釣るだけの商売は楽でいいねえ。 さすがに批判コメだけだとただのアンチと同レベルだから、特に酷かった「解説」をいくつかピックアップしてみた。御本人が見つけた時に、是非参考にしていただきたい。できる頭があったらあそこまで酷くならないと思うけど。 ①2019年カナダGP、ベッテルの5秒のタイムペナルティに対して「個人的に厳しすぎる」と言い添える→これは「解説」ではない。これはあなたの感想でしょ。優勝をペナルティで奪われたベッテル可哀想くらいにしか思ってないのが丸分かり。厳しすぎると思うのであれば、せめてその根拠くらい示すべきでは?100歩譲って示したとしても、コース復帰時のベッテルの幅寄せが無ければハミルトンは前に出ていたことが、インシデントが発生する直前のタイムギャップなどから認められたから、スチュワードはタイムペナルティを科したのであって、車両から送られてくるテレメトリーやリプレイから得られる証拠を覆せるだけの根拠なんて、示せるわけないのはほとんど分かりきったことだけど、もし厳しすぎると思うならせめて根拠くらい示さないといけないのでは?ペナルティがレース結果に直接影響を及ぼした時に、よくこのタイプの意見をよく見かけるけど、スチュワードは科したペナルティがレース結果に介入するかは一切考慮しないのは周知の事実。少々話が外れるが、2018年中国GPで、上位2台がピットエントリーを通過してからSCが宣言された時のボッタスとベッテルの「下位ドライバーが有利になった」という批判に対して、故チャーリー・ホワイティング氏が「安全管理が我々の仕事で、結果管理ではない(要約)」と反論していることからも見てとれる。SCが出たタイミングが下位ドライバーに有利に働いたのは文字通り結果論であり、どのタイミングで宣言すればドライバーに平等かなど、考慮するはずがない。これはペナルティを科す際も全く同じ。違反行為の重大さに応じて罰則を科すのであって、レース結果にどう影響するかも考慮してペナルティを科してしまったら、それこそ同じ違反行為に同じペナルティが科されなくなってしまい、この手の文句を言う人間がよくほざいてる「スチュワードに一貫性が無い」状態になってしまうが、それを分かってて書いているのか?曲がりなりにも「解説動画」でしょ?誰もあなたの感想なんて求めてないよ。 ②2018年ドイツGP、ハミルトンのピットエントリー侵入後の区分線またぎについて「ペナルティは無かったようです」→これ特に酷かった。FIA.comに、このハミルトンの一連のインシデントについての裁定が書かれた文書があり、そこには「Decision:A Reprimand.(1st reprimand of the current season)」つまり、「処分:勧告処分(現在のシーズンで1回目の勧告処分)」と書かれている。つまり、最初に言った「事実と異なるどころか真逆の事」が書かれている。ペナルティは科されていないと解説しているのに、実際には勧告処分という罰則がきちんと科されている。ふざけてるのか?ぶっちゃけこの1点だけ取り上げても、いかに適当に動画を作っているかよく分かる。いくらなんでもこれは「真実とは限らない」じゃ通らないでしょ。こちらで確認した限りでは、この件についてなんの訂正削除謝罪も見てないんだけど、どういう神経してるの?もう少し自分の発言に責任持つべきでは? ③2020年ロシアGP、ハミルトンのペナルティに対する無線の内容、表彰台での態度を槍玉に上げる→ハミルトン絡みのどいひーな解説多いと思わなくもない今日この頃。この人もしかしてハミルトン嫌いなだけなんじゃ?と思ってみたり。一応2018年シーズンからレース解説は全部見てるんだけど、おかしなこと言ってる時は大体いつもハミルトンが絡んでる。まあいいや。まず無線について、というか表彰台の態度もそうだけど、相手も人間でしょ?ステアリングを握り続けた手やヘルメットが当たり続けた頭には跡がつくほどの負荷がかかるし、時に3リットルもの汗をかく。精神的にも肉体的にも疲れ果てた状態で、それでも紳士的に振る舞えというのは、この人だけに限らずあの時にハミルトン叩いてた連中も含めて、一体何様なの?と問いたい。一流のドライバーも人間なのだから、時には頭に血が昇るし、悪態をつく時もあるに決まってるでしょ。2019年オーストリアGPのライコネンの中指立て批判した?あれ国際放送だとモザイク入れないといけないくらい下品な行為なんだけど、どうせライコネンはそういうキャラだからとか言って笑ってたんでしょ?2018年ブラジルGPの表彰式でのフェルスタッペンの態度は?批判した?どうせしてないでしょ?オコンにぶつかられて可哀想みたいなしょうもない感情論に流されてたんじゃない?これらの行為もハミルトンの行為も、どちらも同じ「お行儀の悪い」行為なのに、片方は批判して、もう片方はしない、そんな人間に他人の振る舞いを批判する権利なんか無いよ。ハミルトン叩いてる不特定多数の連中もそうだけど、単にハミルトンの態度が気にくわないから批判しているに過ぎない。もし、その態度や発言が不適切と言いたいのなら、それを決めるのはスポンサーやチーム、またはスチュワードなどであって、少なくともあなたでは絶対にない。不適切であれば正されることは、ムジェロでハミルトンが着ていたTシャツの一件が証明している。最も、あなたが自分の品位を下げることを厭わず気にくわないドライバーを叩きたいのなら、好きにすればいいと思う。 粗探しでもこれだけ出てきた上に、レース解説の方は各1回ずつしか見てなくて、F話本編の方は全く確認していないので、2019年イギリスGPのボッタスのタイヤ戦略を「ミス」と評価していた所など、戦略を雑に解説しているところなどをもっと細かく探せばいくらでも見つかると思う。視聴者が1日でも早くあの動画を卒業することを祈ってる。てか、主が下調べしてから動画作れるようになれば済む話でしょ?いつになったら出来るの?あと、ホンダとかフェラーリとかのファンに突撃されたときのために言っとくけど、こっちはハミルトン信者でもファンでもないからね。あしからず。